愛知・海上の森
2005年に開催された「愛知万博」を機に、広く名が知られるようになった海上(かいしょ)の森。焼物で有名な瀬戸市に所在しています。焼物には良質の土とともに燃料が必要なので、丘陵地から山地の森林はかつて繰り返し伐採され、はげ山が多かったのだそうです。
砂防事業が行われ回復してきた森は、いったん万博の主会場候補になったものの反対運動で計画が見直され、森そのものを保護して展示することになった経緯は聞き知っていたところでした。
最寄りの駅から徒歩30分ほど。万博後に整備されオープンした「あいち海上の森センター」。自然体験・学習の拠点になっているそうです。
全体では約600ヘクタールの面積。縦横に歩道が整備されています。地図をもらって、あいにくの雨の中ですが、出発。
最初は、ヒノキの人工林の中を緩やかに登っていきました。
アベマキ。まだ冬の立ち姿。
コナラ。森林の上層は、これら落葉性樹種が優占。フモトミズナラが分布するのですが、判別できず。
わずかに展葉をはじめた枝も。
アラカシ、イチイガシ、ツブラジイ。これら常緑高木種は中下層に目立ちました。
ナラ枯れした木を伐倒処理した個所。ナラ枯れは、常緑種への遷移を進める契機になっているかもしれません。
林床にはコシダが優占。
五輪塔がありました。室町時代のものだそう。雨に煙る景色。
低木。ハイノキ科、シロバイ。
モクセイ科。ネズミモチ、ヒイラギ、イボタノキ。
モチノキ科も多数。ソヨゴ、イヌツゲ。
クロガネモチ。
タラヨウ。葉裏を傷つけると文字が書けることから「郵便局の木」として知られます(あらためて「葉書」という言葉が味わい深い) 。
尾根に出ると、アカマツ。樹高は10mほど。明るい箇所には稚樹が多数。コースの前半の表層地質は、かつての陸水域に堆積した砂礫層に覆われています。透水性が高く乾燥しやすいため、植物には貧栄養な立地です。
雨がやんで展望が開けました。なだらかな丘陵地にアカマツが広がっています。
ネズミサシ。こちらもやせ地の樹木。多く見かけました。
緩やかに下っていくと、小さな沢筋に看板が立っていました。
このコースのハイライト。シデコブシの小さな群落。花に出会えて嬉しいです。
砂礫層に特有な貧栄養湿地。砂礫層には不透水層があり、水は表面を這うようにゆっくり流れています。このような箇所に湧水地が分布しています。
ショウジョウバカマ。花期であれば希少な草本種が多くみられるとのこと。
尾根を登り返します。ネジキ。
モチツツジ、コバノミツバツツジ。
アセビ。
アオキ。
ヤブツバキ。
ナツツバキ。
尾根を登りきったあたりから、急に樹高が高くなりました。 断層で地層が変わり、ここからは起伏がある花崗岩の山だそう。これまでとの対比が鮮やかです。ブナ科の落葉広葉樹が優占。アベマキ、コナラ、クリ。直径30cmを超えるものも。
ホオノキ。落葉で気がつきました。
遠景にアカマツが少なくなったのも、おそらく地層のせい。
ただし、地位がよいためか、ここから先はほとんど人工林になっていました。ヒノキ。 齢級がわかりませんが、、、まずまずの成長に見えます。下層植生も豊富。
尾根から沢に下るとスギ人工林。
クロモジ、マンサク、キブシ。わずかながらにも春が感じられて、来てよかったとしみじみ。
ヤシャブシ。
「里山サテライト」側の出口から帰りました。里はサクラの季節。
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名古屋市内では、街路樹のハナノキが花期をむかえていました。