サロマ湖・幌岩山
北海道の東部、オホーツク海の沿岸は、知床半島を除けば緩やかな地形が続き、高く目立つ山は多くありません。サロマ湖に接する幌岩山の標高は376m。ふもとをくるまで走っても、気にしなければ目に入らないような山容です。ただ、広葉樹の多い山腹は、とくに春や秋には気になる存在でした。
5月の連休は ―道北はまだ春が遠いので― 例年、新緑を求めて遠出しています。今年の連休はあまり天気にめぐまれませんでした。ようやく晴れた最終日、足を伸ばしてみました。
道の駅が起点。ここからの標高差は300mほど。7時半に出発。
登山口から天然林。コース全体をとおして、緩傾斜地を含め、人工林はごく一部にしか見かけませんでした。
最初はシラカンバの多い二次林でしたが、すぐに、発達した針広混交林になっていきます。湖畔の山なので、水への影響を考慮してあまり強い伐採を行わなかったのかな、とも思いますがどうなのでしょうか。
ミズナラ、シナノキ。道北よりだいぶ展葉が進んでいます。来たよかったと感じます。
イタヤカエデ、ハウチワカエデ。
アズキナシ、ナナカマド。
シウリザクラ。
エゾヤマザクラ。花期はすでにおわっていました。
こちらも花期を過ぎたキタコブシ。
オヒョウ。
カツラ。
ミズキ、アオダモ。
サワシバ。道北では見かけいないので、ここで出会うのはちょっと意外でした。オホーツク海側ではどこまで北に分布しているのでしょうか。
トドマツ。凍裂と、切株上の稚樹。
歩道はよく整備されています。こんなよい天気ですが、出会った人は2組だけ。
イチイ。
ドロノキ。林内に大径木が多く生育していました。
カンバ類は林内には多くありませんでした 。ウダイカンバ。
ハリギリ、ホオノキ、ヤチダモ。展葉が遅い樹種は見逃しがち。
林内に、トドマツ稚樹が密生する箇所が目立ちます。
…と思っていたら、見渡す限り、トドマツの林床になりました。
上層に目立つのはトドマツとミズナラ。両種ともサイズがそろっていて、それぞれ一斉に更新したことが報告されています(トドマツは100年、ミズナラは150年生ほど)。
登山道も下層のトドマツをかき分けて進むほど。このような箇所は、南斜面(湖と反対側)に偏って見られました。このことは、積雪による菌害回避の考え方で説明できるかもしれません。針葉樹の更新には菌害が重要であるとされますが、雪が相対的に少ない南側では土壌凍結が生じやすく、菌類の活動が抑制される、という考えです。
ツリバナ、ヒロハツリバナ。
エゾスグリ、エゾウコギ。
エゾヒョウタンボク、ハシドイ。
ツルシキミ、フッキソウ、ツルアジサイ。
山頂が近づいき、次第に展望が開けてきます。
海に近く風の影響が大きそうなのに、稜線でも樹高が高いのが印象的です。
ゆっくり歩いて1時間半ほどで展望台に到着。東西に広がるサロマ湖。さわやかな風・空気。ここは車道でも来られるのですが、とても静か。
看板が立っていました。
展望台から少し歩くと山頂、ここも静かです。標高は376m。
この付近の林床だけは、膝丈のクマイザサに覆われていました。
ここからは下り道。車道を横切って、東側の登山道をたどることにしました。斜面方向が変わるわけではないのですが、登りではあまり見かけなかったエゾマツが多数。
直径50cmほどの木も見られました。
カツラの大径木も目立ちました。新緑のタイミングもあいまって、すばらしい林相。次はぜひ秋にも来たくなります。
上層をミズナラが占め、下層にトドマツが密生するきれいな二段林。まるで樹下植栽したかのような林相です。ここもまた南斜面。
サロマ湖の青色が映えます。
ツクバネソウ、オオバナノエンレイソウ。
ホウチャクソウ、マイヅルソウ。
ルイヨウショウマ、ニリンソウ、ミミコウモリ。
こちらのルートのほうが急坂でした。斜面下部は、西の登山口の入口の似た林相。シナノキ。
イタヤカエデ。
シラカンバ、ドロノキ。
ヤマナラシ、エゾヤナギ。
下りは、誰にも出会うことなく、登山口。
緩斜面の畑のむこうは青いサロマ湖。
振り返れば、雲ひとつない青空と新緑。よい日になりました。
ここからは、車道を歩き、3km先の道の駅をめざします。
ほとんど見かけなかった人工林ですが、山麓にはわずかに。
途中から湖に沿った小径に入りました。平坦地の天然林。ここも見事。
大径木も見られました。ミズナラ、カツラ。
標高が低い分、展葉が早く進んでいます。オニグルミ、ハリギリ。
花期も山より早く。シウリザクラ、ミズナラ、ヤチダモ。
さわやかな林をゆっくりとたのしみました。
約3時間半、にぎわう道の駅に帰着。