網走湖岸

2024年05月11日

オホーツク沿岸の海跡湖のひとつ、網走湖。畑地が広がる周辺の低地には、かつては広大な湿地が広がっていたと考えられます。その中で「奇跡的に」残されたのが国の天然記念物に指定されている女満別湿性植物群落です。

だいぶ春めいてきた5月の一日、所要のついでに2時間ほどの散策。

JR女満別駅のすぐ裏手。キャンプ場にくるまを止めて歩き始めました。

立派な看板がありました。

まだ枯れ色のヨシ。

すばらしい森が広がっていました。

大径木が並ぶ湿地林、かつては北海道の至るところに見られたのだそうです。

この森は、湖岸と鉄道の線路にはさまれた、わずか百から数百メートルの幅の中に広がっています。鉄道が通ったことで、防雪林の機能が期待され、また、伐採しても線路をまたいでの搬出が難しいことが、この森林を残したと説明されています(舘脇ら「網走湖鉄道防雪林の植生」北海道大学農学部邦文紀要 1967)。

その優占種、ハンノキ(ヤチハンノキ)。とくに水辺に分布します。

経緯に記されるとおり、ほかではなかなか見られない大径木が多く生育していました。

林床にはミズバショウ。

ハンノキの若葉。

果穂が残っていました。花序も見えます。

樹皮。

ケヤマハンノキ(右)と並んだところ。ケヤマのほうはわずかに生育。

ハンノキと並ぶ優占種はヤチダモ。樹高30m近くに達するものも。ハンノキと比べると、水が停滞しにくい箇所に生育しています。

展葉がとりわけ遅い樹種。

ヤチダモとハンノキ、展葉のコントラスト。

ところどころ若木を見かけました。これもハンノキと異なるところ。

たまに展葉している若木が。

ハルニレ。さらに適潤な箇所。

カツラ。

エゾノウワミズザクラ。花が見ごろでした。

ハンノキ、ヤチダモの下層にかなり多く見られました。

イヌコリヤナギ。

タチヤナギ。

ヤナギの花がまぶしい色あい。

マユミ。

エゾツリバナ。

くるまも通行できる道ですが、誰もくることがありませんでした。

オニグルミ。

カシワ。

ミズナラ。

シラカンバ。

エゾニワトコ。

オオバナノエンレイソウ。クサソテツ。

この森が残ったこと、本当に感謝したい気持ち。

ヤチダモの展葉には少し早い時期でしたが、明るい森の散策をたのしみました。