氷ノ山とその周辺
秋休みの続き。知人を訪ねるついでに、氷ノ山とその周辺のおもに天然林を回ってきました。兵庫・鳥取・岡山の3県にまたがる広いエリアを左回りに1周しながら、つまみ食いのように5箇所を訪問。
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まずは西日本有数のブナ林で知られる氷ノ山。
多くの登山道がありますが、今回は兵庫県宍粟市側からのコースを選びました。比較的緩やかな尾根が山頂から南にむかって伸びており、比較的原生度の高い天然林が多いように思われました。国道29号線から林道を30分弱走って「坂の谷コース」の登山口。紅葉の季節ですが、ほかにくるまはありませんでした。8時に出発。
人工林の中を登っていきます。今日の登りではここが一番傾斜がありました。 途中、何度も作業道を横切ります。
クリ。
ミズナラ。これらは少し標高が高くなると目立たなくなりました。
高い標高域まで人工林も続いているようでしたが、登山道は天然林の中に入っていきます。
目立ったのはミズメ。
すでに落葉していましたが、ホオノキも優占種。
傾斜も緩くなり、快適に登っていきます。
ウワミズザクラ。
イタヤカエデ。
コハウチワカエデ、ハウチワカエデ。
コミネカエデ。
ウリハダカエデ。
コシアブラ、ハリギリ。
シナノキ。
スギ。混交林というほど多くはありませんでした。
オオカメノキ、ヤブデマリ。北海道ではあまり見ない樹高4mほどに達するものが多くありました。
リョウブ、ナツツバキ。
登山道沿いにはブナの大径木が続いて現れます。
ミズメもずっと随伴します。日本海側ではダケカンバの西限は福井県とされ(四国・紀伊半島の山地には分布する)より温帯性のミズメはその地位を占めているように見えます。
立木密度も次第に 減少して、やがて疎林化。ホオノキも最後まで目立ちました。
岩の上に育つ「頑張りリョウブ」(確かに)。そのすぐ先に南東の登山口との分岐がありました。標高1,390m。
ここを過ぎると、急に樹木がなくなりました。背丈を超えるササで展望がない中、急登。振り返ると景色が広がりました。
10時。標高1,464mの三の丸山頂。ここには北側から来た登山者が数名いました。
青空と眺望。ササがみごとな広がりです。。。
ブナ林域のさらに遠くに里が見えます。左が兵庫県側、右は鳥取県側。
中央が氷ノ山(1,510m)の山頂。あと1時間ほどの行程ですが、満足したので今日はここまで。ただ、、、
ササの中にはキャラボクが点在。
上から見えたスギに近づくと、10mほどの樹高。風雪に耐え抜いた貫禄が十分。近くには小径木もありました。
矮性化していて一見判別がつきませんが、ブナ。
スギとブナが混交する疎林となっていました。
ほかにシナノキ、オオカメノキ、リョウブなど。ツツジ類も多数。広葉樹のほうが樹高が低く2-5mくらい。
遠方の尾根上にも林が見えました。ササが優占する中にこのような矮性疎林ができた過程はとても気になります。
登り道と同様の樹林帯。引き続き、ミズメが目立ちます。右の木はすごい根上り。
イタヤカエデ、ホオノキ。
ブナ。
スギ。
トチノキ。
クマシデ、キハダ。
ここから約2kmの林道歩き。くるまやバイクがそれなりに通行していました。良い眺めがあり、気持ちよく歩けました。
林道沿いで、今日はじめて会った樹種もたくさん。オオバクロモジ、タニウツギ。
シラキ。
イヌツゲ、ツルウメモドキ。
林道をゆっくり1時間歩いてくるまに戻りました。トータルで4時間。ちょうどお昼。
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たじま高原植物園(香美町村岡区 )
下山後、氷ノ山の山麓を大きく回り込んで東側の香美町へ。標高680mの瀞川平と呼ばれる高原にある植物園。1997年に開園した施設で、人気の場所になっていると聞きぜひ訪れたいと思っていました。
14時。受付で入園料500円。見頃の花(時期的には少ないものの )を知らせるマップをもらい、散策。建物内は食事や喫茶にお出での方で賑わっていました。
この植物園では、17ヘクタールの園内に約2,000種の植物がみられるそうです。「南の地方の植物の北限、北の地方の植物の南限、高山植物の低限、低地植物の高限」という解説。
二次林のエリア。アベマキ。
コナラ。
ミズナラ、クリ。
イロハモミジ、ウリハダカエデ。
オオモミジ。
アカシデ、イヌシデ。
ニシキギ、ツリバナ。
オオバクロモジ、ケクロモジ。
タムシバ、フジ。
シラキ、キブシ。
ヤマナラシ、ヤマウルシ。
湿地のエリア。木道が整備されています。
ネコヤナギ、オノエヤナギ。
敷地内には湧水があり、実に日量5,000トンに達するとのこと。そこにある大カツラがこの植物園の主役です。
樹齢1,000年と言われる大きな株。その下を湧水が流れています。この水を持ち帰る人もいて多くいました。
トチノキ。
ケヤキ。
ケンポナシ。看板がなければわかりませんでした。樹高20m以上。
ウリノキ、ウツギ。
少なかった針葉樹。スギ、カヤ。
同じく、常緑種。アセビ、ヒサカキ。
ネムノキ、ミツマタ。
アズキナシ、ウワミズザクラ。
ミツバツツジ、ホツツジ、ドウダンツツジ。
コバノガマズミ、オトコヨウゾメ。
ヤマボウシ、コハクウンボク。
アオダモ、タカノツメ。
たくさんの樹木に出会えて満足でした。違う季節にまた訪れたいです。 気軽に訪れられる場所としてお勧め。
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神鍋渓谷(豊岡市日高町)
夕方。日の短い季節ですが、少し時間があったので、旧日高町の神辺渓谷に足を延ばしました。ふたつの滝に至る歩道がついていました。
オニグルミ、カツラ。
サワグルミ。今日はほかで見かけませんでした。
ヤマハンノキ、フサザクラ。
ここには西日本では有数のアスナロの群生地があると聞いてきました。が、川の対岸にあり、あまりよく見ることはできませんでした。
アカシデ、エノキ。
ヤマフジ、ムラサキシキブ。
時間はまもなく17時。今日はここまで。
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芦津渓谷(智頭町芦津)
翌日、今度は氷ノ山の西側に大きく移動。林業地として名高い智頭町の市街地、くるまで30分ほど。用務であまり時間がなかったのですが、朝8時から、一番手前のコースを1時間ほど散策。
標高650m。「森林セラピー基地」としていくつかの歩道が整備されています。
最初はスギ人工林。「80年生まで皆伐禁止」の鳥取県の看板
やがて天然林に入ります。天然スギも。
歩道は、かつて木材を搬出したトロッコ道を利用したもの。
斜面の傾斜はキツく、多雪地特有の大きい根曲がりも。
広葉樹の優占種はミズナラ、クリ。
シオジ。
トチノキ、ミズメ。
クマシデ、アカシデ。
ウリハダカエデ。紅葉の主役となっていました。
オオバクロモジ、ダンコウバイ。
ハクウンボク、アワブキ、フサザクラ。
ヤマグルマ、アセビ。
カヤ。シカの食害のためか林床植生は乏しい箇所が多め。
倒れたスギの枝がそれぞれ1本立して更新。
保護林の看板と、セラピー効果を示す看板。解説が充実していました。時間切れとなり、歩道を引き返しました。
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若杉天然林(西粟倉村大茅)
さらに翌日(11/5)の朝7:30。県境を越した岡山県西粟倉村。ここはすでに標高900m。
紅葉には少々時期が遅く、誰もいませんでした 。
最初は谷沿いをゆっくり登っていきます。ここも解説がとても充実していました。
沢沿いの優占種はトチノキ、サワグルミ。ほとんど落葉してしまっていましたが。。。
ホオノキ。
辛うじて葉が残ったオヒョウ、ツノハシバミ。
歩道に沿って、ナラ枯れの処理後が目立ちました。この地域でも被害が広がっているようで心配です。
健全なミズナラ。個体ごとにモニタリングされている様子でした。
斜面上にはブナ林。大径木もあり、発達した森林です。
クマシデ、ミズメ。
ツノハシバミ、サワフタギ。
天然スギが混交した林が続きます。
1時間弱で岡山・鳥取県境の尾根に到達。標高1,100m。今日はここが最高地点。鳥取側はスギの人工林になっていました。
カラマツ。おそらく境界の目印に植えられたもの。これを境に岡山県側は対照的な天然林。
ナナカマド、コシアブラ。
ヤブデマリ。
タムシバ、リョウブ。
林床はササ。
イヌツゲ、カヤ。
若杉峠に到着。あと1kmほど尾根を進めば岡山・鳥取・兵庫の三県境という立地。ここからは旧街道で、沢沿いの石畳が残る下り道。
滋味深い紅葉を眺めながら。。。
種子トラップが設置されて、調査されている箇所も。
登り口に帰りつきました。2時間弱の散策でした。
帰り道。集落近くにあった、よく管理されたスギ人工林。樹下にクリが植栽されていました。
これで帰途につきました。
今回は、事情あって2日目、予定通り回れなかったのですが、さまざまな天然林を歩けて満足しました。
次の機会には、この地域の人工林を見に再訪する予定でいます。